羊草ーひつじぐさー

真実を知る者



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 クロヌマタカトシさんの展示を観てきた。

 香川のギャラリー「空とたね」にて。


 「太古の森の動物達を作っている」
 展示の前のブログで、クロヌマさんはそう綴っていた。

 流木のありのままを殺さず、手を加えることは最低限にとクロヌマさんは考えたのではないか。
 それが、動物達の表情や息づかいを、ありありと見せているように感じられた。


 狼、白鳥、ユニコーン、犀、クジラ。

 全身であったり、頭だけであったり。
 動物達は一様に静かで、沈黙の中に生きていた。

 偶然ではあるが、私にとってそれらの動物達は、この世界の真実を知る者だと感じてきた。

 真実を知る者は、黙して語らない。
 真実とは、いろんな理由から隠されてきたし、語る者は辺縁に追いやられる運命にあった。

 真実を知る者は、マイノリティーの定めを生きざるをえないが、それを受け入れて、ひっそりとこの世界のどこかで息をしている。
 それが自分を守る術だということが、身についてしまったかのように。

 そして、彼らは「まつろわぬもの」でもあるのだ。


 物言わぬ者達に囲まれて過ごす時間は、私にとってとても安らかな時間だ。

 まつろわぬものの無言の語りを聴くのが、昔から好きなのだ。
 そしてそこには、これまで語られてこなかった真実の音がこだましている。

 まつろわぬものの繊細な波動を私は愛している。
 それは決して私を傷つけることのない、優しさに満ちた波動でもある。




 


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 狼の目は、黒々として、澄んだ光を湛えていた。

 私はこの狼の、右の瞳と表情にたまらなく惹かれて、長い間そこに佇んでいた。









 
by hituji-gusa | 2016-09-30 17:22 | いろやかたち